とりかえばや(2)

「ったく腹立つよな」
「ホント、ひどいよ…」
 安藤の立ち去った後の教室で、は組の生徒たちが寄り集まっていた。みな、それぞれ憤懣がたまっているようである。
「そうだ! いくらぼくの字がきたないからって、あんな言いかたしなくたっていいじゃないか!」
 団蔵が拳を握る。
「そうだそうだ!」
 きり丸が同調する。
「な? きり丸もひどいと思うだろ? いくらなんでも、あんなふうにぼくの字が読めないみたいなこと言わなくたって…」
「そうだ! 団蔵の字はきたないけど、読むには読める!」
 きり丸の台詞に、皆が脱力する。
「あのさ、きりちゃん…そういう問題じゃなくて」
 乱太郎が首を軽く振る。
「ぼくのナメクジさんのこと、ナメクジなんかって言ったんだよ!」
 喜三太も負けじと言う。
「ぼくだって、あんなこといわなくたって…」
 しんべヱもぷりぷりしているが、きり丸にあっさりと言われる。
「いや、テストに鼻水だのよだれだのたらさねーだろ、フツー」
「とにかく!」
 団蔵が声を張り上げる。
「このまま安藤先生には組の担任をいつまでも続けられてたまるか! みんなどう思う?」
「そうだ!」
「土井先生に戻ってきてもらおう!」
 何人かが声を上げる。
「でもさ、どうやって?」
 冷静に突っ込むのは兵太夫である。
「それは…」
 言葉に詰まった団蔵が、救いを求めるように庄左ヱ門に視線を送る。兵太夫たちも倣う。結局、考えることは庄左ヱ門が頼りなのだ。
「…」
 庄左ヱ門は眉間にしわを寄せたまま、腕組みをして考えこんでいる。しばし沈黙が流れる。は組たちの不安が高まる。
「どうしよう…は組の頭脳、庄左ヱ門が考えこんじゃってる…」
 しんべヱが沈黙に耐えられずに呟く。
「…よし」
 小さく頷くと、庄左ヱ門は、ゆるゆると組んでいた腕を解いた。
「おしっ、庄左ヱ門がなにか思いついたようだぜ」
 きり丸が指を鳴らす。
「ぼくは、今回のことは、原因があると思うんだ…」
 重々しく口を開いた庄左ヱ門の言葉に、寄り集まった皆が首をかしげる。
「どういうこと?」
 伊助が訊く。
「つまり、ぼくたち一年は組の成績が悪すぎるってこと」
 全員が脱力した。
「しょ、庄左ヱ門…いまさらそれを言う?」
 乱太郎がずり落ちた眼鏡を直しながら苦笑いする。
「でも、事実だろ? だからこそ、安藤先生はイヤミを言うし、土井先生も言い返せないし、学園長先生に担任を換えればいいなんて言われちゃったんだから」
 庄左ヱ門はあくまで真面目に言ったようである。
「でもさ、こればっかりはどーしようもないだろ?」
 座りなおしながら、きり丸が口を尖らせる。
「そう、どうしようもない。本当なら、安藤先生でもぼくたちは組の成績を良くするなんてできないことが分かってもらうのがいちばんだけど、それじゃ時間がかかりすぎる。そのあいだ、安藤先生にいろいろ言われるなんて、耐えられないだろ?」
 自分の話すことが、いろいろ方向性として間違っていることは自覚していた。それでも、頷きながら自分を見つめる仲間たちに順々に眼をやりながら、庄左ヱ門は続ける。
「だから、次の方法が必要になる。それは…」
 声を潜めた庄左ヱ門を囲むは組の円がいっそう凝集する。

 


「どういうことなんですかっ!!」
 教師長屋の半助の部屋を訪れた安藤は、ずかずかと入ってくるなり怒鳴り散らす。
「な、なんですか…」
 授業の準備をしていた半助が、当惑した声を上げる。は組の授業をしたからには、何も言ってこないことはないだろうと思っていたが、いささか予想外な激しい反応である。
「いったい何なんですかあのクラスは! 授業中にナメクジは持ち込むわ、とても読めないようなミミズの這ったような字を書きなぐるわ、挙句はテスト用紙によだれと鼻水をべったりつけて提出するのですよ…! 考えられますか!」
 -ああ、喜三太と団蔵としんべヱだな…。
 なるほど、安藤が興奮するのも無理はない。少々手荒い歓迎を受けたということであろう。
「…きり丸に至っては、授業中にダイレクトメールの宛名書きのバイトを…!」
 思い出すだけでも腹立たしいのか、安藤はこめかみを押さえて頭を振る。
「おまけに、は組の生徒たちの授業の進み具合と理解度をみようとテストをやってみたら、いったいなんなんですかこの点数は…!」
 いつもなら、は組の悪い点数はイヤミの種になるところだが、実際に採点してみると違う感覚になるらしい。傍らに抱えていた紙束をばさばさと振り回しながら、怒鳴り散らす。額に青筋を刻んだまま、安藤はなおも口角泡を飛ばす。
「まともな点数なのは庄左ヱ門だけ。あとの生徒はぜんぶ一ケタ、というか、0点の生徒が5人もいたのですよ5人も! クラスの半分が0点だなんて、土井先生、あなたどんな教育をしてきたんですか!」
「ところで安藤先生、テストの出題範囲はどこまでだったのですか」
「『忍たまの友』の38ページまでですが」
「ああ、それではムリですよ」
 半助は苦笑する。
「は組は、まだそこまでは進んでいません」
「だが、庄左ヱ門君はきちんと解けていましたよ」
「庄左ヱ門は、予習、復習をきちんとやる生徒だ。だが、ほかの生徒たちはそうはいきませんから」
「そこが違うのです、できの良いい組の生徒たちとは」
 ようやく少し落ち着いてきたらしい。安藤はいつものように得意げに胸をそらせた。
「土井先生も、い組の生徒たちをみてよく分かったでしょう…できの良いい組のよい子たちは、全員、予習復習を欠かさずやっています。これこそが教育の効果というものです」
「はあ、そうですか…」
 頭をかきながら、半助は肩をすくめる。い組のことになると立ち直りが早い、と思いながら。

 


 実は、テストを用意していたのは半助も同じだった。ただ、思った以上にい組は授業が進んでいたことと、かなりの程度予習していることがすぐに察せられたので、は組としては高度な内容のテストも出しづらくなったのである。
 -あの視線は、痛かったな。
 だが、それ以上に半助にとって打撃だったのは、自分を見つめるい組の生徒たちの視線だった。教師経験が浅く、もっぱらは組を教えた経験しかない半助にとって、教科についてははるかに進んでいるい組の生徒を相手に、どこまで理解しているかの間合いを取りながら授業をすることはかなりの苦行だった。端的に言ってい組のレベルに及ばない授業をしている自分を見つめる生徒たちの視線が、明らかに失望の色を濃くするにつれて、いよいよ混乱して授業の進め方の軸を見失う悪循環は、思い出すだけでも胃が痛むものだった。半助は、教師としての適性すら見失いかけていた。
 -私は、ほんとうに教師になってよかったのだろうか…。
 傍らの、ついに使うことのなかったテスト用紙の束に眼を落とす。安藤のあの嫌味は、けっして根拠のないものではなかったのだと思い知りながら。
 -安藤先生も、きっといまごろ、は組がどんなにだめか、ほかの先生方に話していることだろう。そうなった責任は、やはり私にあるのだろう…。
 実技担当の伝蔵と違い、教科担当の自分には、は組の現状により深い責任がある、と半助は考える。自分が担任でなかったら、は組にはもっと違う現在があったかもしれない。それはつまり、自分が担任になったことで、は組の生徒たちに不利益をもたらしてしまったということなのだ…。

 


「私の方法は、間違っているのでしょうか…」
 夜の教師長屋で、半助はうなだれる。
「どうかしましたかな」
 テストの準備をしていた伝蔵が、手を止める。
「今日一日、い組の授業をやりました」
「ああ、クラスの取替えは、今日からでしたな」
 思い出したように、伝蔵は軽く天井を仰ぐ。
「そうなんです」
「い組の生徒たちは、どうでしたかな」
「はい…それが」
 言いにくそうに、半助は言葉を切った。伝蔵が首をかしげる。
「実に優秀でした。そもそも『忍たまの友』の進み具合がぜんぜん違っていまして…」
「そうでしたか」
 そうであろう、と伝蔵は思った。い組は教科の面では、かなり進んでいると聞いていた。
「それに、きちんと予習をしているらしくて、授業中にもたくさんの質問が出ました。なかには、私もすぐには答えられないような高度なものもありまして…」
 授業を聞いているか、それ以前に、授業中に寝ていないかに眼を光らせる必要があるは組とは根本的に違うのだ。
「ほかの生徒たちも、きちんと話を聞いてノートをとっているのがよく分かりました…」
「そうでしたか」
「やはり、これは担任の教育力の差なのでしょうか…私は、生徒たちにきちんと教えられていないということなのでしょうか」
 半助は文机に肘をついて頭を抱える。
「まあまあ…土井先生はまだ教師になって日も浅い。キャリアを積んだ安藤先生とやり方が違うのは当然だ」
「しかし、これでは、は組の生徒たちは、私が担任であるばかりに不利益をこうむることになる…もし安藤先生が担任だったら、もっと成績がよかったかもしれない…」
 頭を抱えたまま、半助は呻くように言う。
「それはどうですかな」
 お茶でも飲みませんか、と伝蔵は腰を上げながらさらりと言う。その声に、半助が顔を上げる。
「どういう、ことですか?」
「土井先生にも分かってらっしゃるはずだ。それぞれのクラスには、そのクラスなりの雰囲気があって、教育方法でも向き不向きが分かれる…それとも、酒にしますかな」
 気が変わったのか、伝蔵は、戸棚から酒の入った瓢箪を取り出す。
「は…はい」

 


「ねえ、一平」
 翌日の放課後、生物委員会の菜園を手入れしながら、三治郎が声をかけた。傍らには、虎若が雑草を引き抜いている。
「なに? 三治郎」
 けげんそうに上ノ島一平が振り返る。
「そっちはどうだった? 土井先生の授業」
 雑草を引き抜きながら、三治郎は続ける。
「ああ、そのこと」
 納得したように頷くと、一平は蔓をはわせている支柱を直しながら口を開く。
「まあまあなんじゃない?」
「まあまあ?」
 三治郎たちが顔を上げる。
「とっても分かりやすく教えてくれるけど、はっきり言ってい組のレベルに合ってないっていうか」
 内容は嫌味そのものだが、それを一平は淡々と言う。それが嫌味とは思っていないのだろう。
 い組のなかでは割合素直な物言いをする一平に目をつけたのは庄左ヱ門だった。い組とは組の担任取替えを解消するための第一段階は、い組が半助をどう思っているかを探ることだった。その舞台となったのが、い組からもは組からも比較的性格が穏やかな生徒が所属している生物委員会だった。これが会計委員会や作法委員会だったら、程度の差はあれ一戦勃発せずにはいられなかっただろうから。
「ふうん、そうなんだ」
 一平の言葉に反駁することもなく、虎若は軽く首を傾げただけで、また雑草を探し始める。
「だから、ちょっと物足りないみたい…特に伝七と佐吉は」
 支柱同士をくくる縄を結わえなおしながら、一平は続ける。
「そうなの?」
「うん…だって、みんなとっくに予習してきているから、もっとレベルの高い話をしてほしいのに、同じようなところをていねいに説明するもんだから退屈だし、伝七が質問したことにはすぐに答えられなかったし…」
「そんなことってあるんだ…」
 感嘆して、三治郎と虎若が顔を見合わせる。もっとも、は組の授業では、半助に質問するのは庄左ヱ門くらいだったが。
「だから、みんな、安藤先生みたいな授業をしてくれないかなって言ってるよ。伝七は、土井先生もいずれ慣れれば安藤先生みたいな授業をやってくれるって言ってたけど」
 いかにも上から目線の言葉に、半助の授業を、値踏みするような視線でみているい組の生徒たちの様子が想像できて、三治郎も虎若も悲しくなった。
 -土井先生。やっぱり土井先生はぼくたちの授業に戻ってきてもらわなきゃ。
「で、は組はどうなの? 安藤先生の授業は」
 唐突に一平から訊かれて、三治郎は、思わず引き抜いた雑草を取り落とした。
「う、うん、どうだろ…ねぇ虎若」
「ま、まあ、さすが安藤先生ってかんじかな…」
 自分たちでも何を言っているのかよく分からない答えだったが、一平は「ふーん」と鼻で返事をして支柱の補修を続けている。


「…ったく、まいったよな」


「ああ、もう、ホント今すぐ土井先生にかえってきてほしいよ」
 放課後のは組の教室では、ぐったりしたは組の面々が文机や壁にもたれていた。
 翌日のは組の授業には、安藤はすでには組向けのカリキュラムを用意していた。
「ひどいよ。ぼくたけ書き取りをさせるなんて」
 疲れきった顔で団蔵がぼやく。団蔵には、他の生徒とは別メニューでひたすら仮名の書き取りが用意されていた。
「ぼくのナメ壷を取り上げるなんてひどいや…ときどきふたを取って新鮮な空気をすわせてあげなきゃいけないのに」
 喜三太も憤懣やるかたないようである。
「鼻紙をもってくるくせに、洗濯ばさみで鼻をつまんでおけなんて、ぼくはどうすりゃいいのさ!」
 しんべヱに用意されたのは、大量の鼻紙と洗濯ばさみだった。こまめに鼻をかむとともに、授業中に寝ないようにとのことらしい。
「こんなの、もうガマンできないよ!」
「ねえ、庄左ヱ門。なんとかしてよ」
 クラスメートたちが口々に訴える。庄左ヱ門は腕を組んで考えこんでいる。
 -たしかに、あの授業は、は組には厳しすぎるな。
 安藤が用意してきたカリキュラムは、安藤の話をひたすら書き取ることだった。それも、途中で相互にチェックをさせるものだから、一部が抜けていることも許されないものだった。全員が速記者になったようなもので、授業が終わった頃には全員が精根尽き果てていた。庄左ヱ門さえ、きついと思う授業だった。
 -手を動かすことで授業の内容が頭に残りやすくなることはたしかだけど、は組に合う方法とはとても思えない…。
 だからといって、半助の話を半ば聞き流すようなこれまでの授業が良いとも思えなかったが。どうすればは組に合う方法で授業に集中させることができるだろう…いつの間にか、思考がそちらに流れている。
「ねえ、庄左ヱ門?」
 庄左ヱ門の沈黙にたまりかねたように、伊助が声をかける。
「あ、ああ…ごめん。その前に、三治郎と虎若、一平の話はどうだった?」
 まずはい組の反応を確かめるのが先だった。
「うん。それがね」
 三治郎と虎若が顔を見合わせて口ごもる。一平の台詞を思い出していた。
「…い組には、土井先生の授業はゆっくり過ぎるみたい。もっとレベルの高い授業をしてもらわないとって言ってた。伝七は、土井先生もい組に慣れれば、安藤先生みたいな授業をやるだろうって言ってるみたいだけど」
「んだってぇ?」
 きり丸が拳を握る。
「なんだよ、その上から目線なコメント」
 兵太夫も腹に据えかねるようである。
「ね? ひどいと思うだろ?」
 三治郎がつぶらな瞳を精一杯見開きながら言う。
「せっかく土井先生がいっしょうけんめい教えているのに、そんなふうに見てるなんてひどいよ…」
「こうなりゃ、どうあっても土井先生にはは組に戻ってきてもらうしかないと思う」
 虎若の言葉に、何人かが力強く頷く。
「どうすればいいと思う? 庄左ヱ門」
 ふたたび腕を組んで考えこんでいる庄左ヱ門に、皆の視線が集まる。
「…ぼくには、土井先生に戻ってきてもらうには、方法は二つしか思いつかないんだ。もっとほかの方法がないかなってずっと考えているんだけど、どうしても思いつかない」
 庄左ヱ門の口調は、苦いものでも含んでいるかのようである。
「二つもあるなら十分だよ。さすが庄左ヱ門」
「もったいぶらないで、はやく教えてよ」
 乱太郎と兵太夫が口々に言う。
「ひとつめは、ぼくたちは組の成績がよくなって、もう安藤先生に教えてもらわなくてもいいくらいだって学園長先生にも認めてもらうこと」
「げ」
「ムリに決まってんだろ」
「庄左ヱ門、本気?」
 たちまち抗議ともつかない仲間たちの声が上がる。庄左ヱ門は小さく首を横に振って言う。
「物事を考えるときは、どんなにばからしいことでもいいから、とにかくあらゆるアイデアを出す必要がある。そのなかから、少しずつ現実的な方法に絞り込んでいく。それがぼくのやりかたなんだ」
「でもさ、あんまりムチャすぎるよ」
「で、もうひとつの方法は?」
 仲間たちに促されて、庄左ヱ門はふたたび口を開いた。
「もうひとつの方法は、い組の連中に、安藤先生にもどってきてほしいといわせること」
「お」
「うん」
 今度は誰も拒否反応を示さない。
「それで、庄左ヱ門は、どうやってい組の連中に、安藤先生に戻るよう言わせるつもり?」
 三治郎が訊く。
「そのまえに言っておきたいんだけど、ぼくは、この方法も決していい方法とは思えないんだ」
 考え深げな庄左ヱ門の言葉に、皆が首をかしげる。
「どういうこと?」
「考えてもみてよ…い組の連中が、安藤先生に戻ってほしいっていうことは、つまり土井先生の授業がいやだっていうことなんだよ。それって、土井先生の教え方がよくないっておおっぴらにいうのと同じことなんだよ」
「…」
 虚を衝かれたように、皆が言葉を失う。
「…ぼくは、土井先生も、土井先生の授業もだいすきだから、先生がそんなふうにおもわれるなんて、がまんできないんだ。だから、ぼくはこの方法もできれば使いたくない。でも、どうしてもほかにいい方法が思いつかないんだ」
 力なく庄左ヱ門がため息をつく。ため息は、そのままは組の仲間たちに伝染していった。
「でもさ」
 重苦しい沈黙を破ったのは兵太夫だった。皆の視線が集まる。
「ほかに方法がないなら仕方がないよ。それに、ほかの誰かが、土井先生のことをそんなふうにおもったとしても、ぼくたちにとっては土井先生は尊敬できる先生なんだから、それでいいじゃんっておもうんだけど」
「ほう」
「どう思う? 庄左ヱ門」
 仲間たちの視線が庄左ヱ門に戻る。庄左ヱ門は、顔を伏せぎみにしながらちいさく笑う。
「…そうだね。考え方のちがいだね」
 それは庄左ヱ門自身にも賛成とも反対ともわかりかねる答えだったが、は組の皆には、庄左ヱ門が賛意を示したと受け止められた。
「おしっ! そしたら、さっそく作戦開始だぜ!」
 きり丸が気勢を上げる。
「おう!」
「でも、どうするの?」
 喜三太が訊く。
「俺にいい考えがある!」
 きり丸が片目を瞑る。

 

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