Settlement(2)


「ヘムヘム」
「なに、福富屋さんからお手紙だと?」
 教師長屋の自室で書類を作っていた伝蔵が、ヘムヘムの声に顔を上げる。
「ヘム」
 伝蔵に手紙を渡すと、ヘムヘムは立ち去った。
「福富屋さんですか? なんのご用なんでしょうか」
 宿題をチェックしていた半助も興味を引かれたようである。
「さて、なんでしょうな…」
 ひとりごちながら手紙を開く。
 -これは?
 読み進めるうちに伝蔵の眉間が次第に深く刻まれていく。
「どうかされましたか?」
 伝蔵の表情の変化に、半助は早くも何かを察したようである。
「福富屋さんが至急で会いたいとのことだ。出かけるぞ、半助!」
「はい!」



「…で、どうして私まで…」
 得意げにしゃなりしゃなりと先を行く伝蔵に続いて、いやそうに半助が声を上げる。
「あなたはいま半子さんなのよ。そんなどてどてした歩きかたをしないで、もっとお上品にお歩きなさい…私みたいに」
「そうは言いましても…それにこの道、どこに続いているのですか? 堺とは違う方向ですが」
「この先で待ち合わせましょって、福富屋さんのお手紙に書いてあったの」
「この先って…人家もないところですよ?」
「ほら、ごらんなさい。あそこに止まっている牛車、きっと福富屋さんのものですわ」
 伝蔵の視線の先に、田舎道にふさわしくない牛車があった。



「伝子さん! 半子さん! お待ちしておりましたぞ!」
「まあうれしい! 久しぶりにお目にかかれてうれしいわ!」
 牛車から飛び出してきた福富屋と伝蔵が駆け寄って手を取り合う。牛車の御者は主人の奇行に慣れているのか、眼の前の恐るべき光景など存在しないかのように牛の世話をしている。いやいやながらやって来た半助の腕を、がばと福富屋の腕が絡まる。
「さあさ、ごらんなさい、この一面のお花畑を! ここで3人でデートしましょう!」
 陽気な声にようやく周囲の景色に注意を払うことができた半助は、思わず眼を見張る。
 -なるほど、これはすごい…。
 ただの田舎の風景と思っていたが、そこは可憐な花が一面に咲き乱れた丘だった。
「さあ、行きますぞ! ラン、ラン、ラーン♪」
 両腕に伝蔵と半助の腕を絡ませたまま、福富屋は丘のてっぺんに向けてスキップを始めた。
「そうね、参りましょ! ラン、ラン、ラーン♪」
「だからどうして…ら、ラン…」
 スキップする伝蔵と引きずられるような半助を両側に従えて、福富屋は丘を上っていく。
「…ここらでいいでしょうな」
 低く呟くと、福富屋はスキップを止めた。
「そうね。ではここで座りませんこと?」
 自慢のストレートヘアを軽くかき上げると、伝蔵はその場に横座りになる。その隣にいつものように胡坐をかいた半助だったが、伝蔵に睨まれて慌てて端座する。
 -なるほどね。
 辺りを見回しながら半助は納得していた。お花畑となっている丘のてっぺんであれば、誰かが忍び寄って話を盗み聞くなど不可能である。そして、わざわざこのような場所までやって来るということは、絶対に他人に聞かれては困る話があるに違いない。
「さて、お手間を取らせてしまい、申し訳ありませんでしたな。私の家では誰が聞いているか分からないのでね、ここまで御足労いただきました」
 腰を下ろした福富屋の口調は、いつもの大商人のものになっている。
「といいますと?」
「おおかたオシロイシメジの手の者が潜り込んでいるのでしょ」
 福富屋が答える前に伝蔵があっさり言う。
「そういうことです。そのせいで、学園に硝石を届けることもままなりません」
「そうでした! そういえば先日、硝石の運搬ルートと警備体制の件で、火薬委員の久々知がお邪魔しましたね」
 ようやく半助も思い出したように言う。
「そうです。3人とも、オシロイシメジの動きにずいぶん強い関心を持っていましたな」
「ちょ、ちょっと待ってください…3人ですか?」
 外出許可書は兵助と八左ヱ門の2人分しか出した記憶がない半助が慌てて遮る。
「そうですよ。久々知君と竹谷君と、尾浜君の3人でした」
「…なぜ、勘右衛門が…」
 唖然として呟く半助を伝蔵が軽くつつく。
「今はその話は措きましょ。で、3人はどんな話を?」
「オシロイシメジ城が裏ルートで火縄を調達していることを知っていました。まあ、その背景までは知らなかったようですが」
「ほう」
「あまり子どもたちだけで深入りされてもと思ったのでそれ以上の話は控えましたが、あのままではオシロイシメジ城に偵察に潜り込みかねないと思ったので、お話をと思ったのです」
「ありがとうございます。今回の件では、私たちの生徒がひどい目に遭いましたもので、上級生たちも腹に据えかねているようです…とはいえ、相手は城ですから、あまり無茶をされても困る。情報をご提供いただきまして、感謝いたします」
 いつの間にか伝蔵の口調に戻って深く礼をする。慌てて半助も頭を下げる。
「いえいえ。庄左ヱ門君にはしんべヱもずいぶん世話になっているようですからな。あの件では、私ども堺の不心得な商人が関係していました。本当に申し訳なく思っています」
 深刻な表情になった福富屋が一礼する。「そのための罪滅ぼしといってはなんだが、私どもとしてもオシロイシメジ城に一泡吹かせるためにご協力したいと思いましてな」
「お気持ちはありがたいのですけど、少し危険じゃありませんこと?」
 すぐに伝子の口調に戻った伝蔵が軽く眉をひそめる。
「ご懸念はごもっともです…だが」
 身を乗り出した福富屋が悪戯っぽく笑う。「私が耳にした話をお聞きになってからお考えになっても遅くはないと思いますよ」



「どう思いますか、山田先生」
「伝子さんとお呼び」
「はあ、では伝子さん、どう思いますか」
 定例化したやり取りを繰り返しながら伝蔵と半助は学園へ向かっていた。
「そうね。興味深いことはたしかね」
 そっけなく答えながらも、福富屋から聞いた思いがけない話をどのように判断すべきか迷っていた。
「オシロイシメジ城と組んでいるのがオーマガトキ城とは…」
 顎に手を当てた半助は、その意味するところを読み解こうとする。いつの間にか歩きかたががに股になっている。
「半子さん、もっとおしとやかにお歩きなさい。はしたない…ま、今回のオシロイシメジとオーマガトキの関係は単発のビジネスと考えた方がよさそうね」
「は、はい…」
 慌てて内股歩きになりながら半助は呟く。「つまり、オーマガトキの鉄砲隊のリストラということですか」
「そういったとこね。オーマガトキはタソガレドキとの戦では落城寸前まで追い込まれたし、城主は人望がなくて領地から年貢が取れないから財政破綻寸前で鉄砲隊にも手をつけざるを得なくなったというとこでしょうね」
「オーマガトキは事実上タソガレドキの管理下にあるといっていい。そんな城と同盟を組んでもオシロイシメジ城にメリットはない」
「だからこそ、タソガレドキがどう出るか、というところね」
「タソガレドキが絡むとなれば、なおさら生徒たちがこの件に絡むのは危ないではないですか!」
「そこなのよ」
 伝蔵はため息をつく。
「庄左ヱ門の仇を取るつもりで息巻いている三郎と勘右衛門を説得するのも一苦労だし、それ以上にこのことが学園長先生のお耳に入る前に片づける必要があるわ」
 この件に関係する人物の中でもっとも厄介なことを起こしそうな人物の姿が頭をよぎる。
 -学園長先生なら、学園全体を巻き込んだゲームに発展させかねないわ…。
 考えただけで頭が痛くなる。
「う…そんなことになってはまた教科書が遅れる…」
 にわかに胃がきりきり痛む気がして半助が腹を押さえる。



「ほう。やっと動き出すか」
 オシロイシメジ城では、忍組頭が部下からの報告に満足したように頷いていた。
「は。海路で兵庫水軍の本拠地まで運んだあと、忍術学園まで運ぶようです」
 福富屋の周辺を探らせていた手下からの報告があげられる。
「だが、大丈夫なのか」
 傍らに控えた副官が心配そうに訊く。「大坂屋との件では、忍術学園と事を構えているのだぞ。これ以上こじらせるのはどうかと思うが…」
「だからこそ、でございます」
 部下は確信を込めた笑みを浮かべて言い切る。「もともと忍術学園との関係はよくなかったし、事ここに至ったうえは関係修復は不可能であり、その必要もないでしょう。そうであれば、なんの遠慮がいりましょう」
「それはそうだが、これ以上城の防備が手薄になるのはいかにもまずい」
 すでに複数の城を相手に戦を展開しており、城の守りは最低限の手勢と忍組だけとなっていた。その忍組も、各地への情報収集にかなりの勢力をそがれていた。
「その通りです。もはや我らに忍術学園に向けた手勢を割くゆとりはない」
 小隊長の一人が声を上げる。「硝石は確かに咽喉から手が出るほど欲しいが、あえて忍術学園を敵に回さずとも、もっと容易な方法があるはずでは…」
「構わぬ」
 小心そうに言いかける副官を忍組頭が遮る。
「いずれにしても諸方で戦を展開している我らは、何としても硝石を手に入れねばならぬ。忍術学園が調達しようとしている硝石を手に入れたならば、そのぶん忍術学園の戦力が落ちることになる。これこそ一石二鳥というもの。ただし、忍術学園が何を仕掛けてくるか分からん。重々注意して進めるように。よいな」
「はっ」
 素早く応える部下たちに続いて、副官たちもためらいがちに声を上げる。



「納得できません!」
「そうです! 理由をきちんと説明してください!」
 教師長屋の鉄丸の部屋に抗議の声が上がる。伝蔵と半助から頼まれて、勘右衛門と三郎に当面外出許可書を発行しないと申し渡したのだ。
「理由だと?」
 むすりと腕組みをしていた鉄丸が低い声で凄む。「お前たちがオシロイシメジ相手になにやらやらかそうとしていることくらい、この木下にはお見通しだ。だが、そんなことは許すわけにはいかん」
「しかし…」
 鉄丸の勢いに呑まれかけながらも勘右衛門は抗弁する。「このままオシロイシメジをのさばらせておいてもいいのですか!?」
「では、オシロイシメジ相手に何をするつもりだ」
 かっと見開いた眼が勘右衛門を睨み据える。「城攻めでもする気か?」
「でも、学園としてもオシロイシメジの動きを封じないといけないのではないのですか?」
 三郎が指摘する。「学園が調達しようとしている硝石を狙っているのですよ?」
「当然だ」
 むすりと言う鉄丸の口調に軽い迷いがにじむ。その件については火薬委員会マターなのであまりきちんと半助から事情を聞いていたわけではなかった。「その件は火薬委員会顧問の土井先生が警備体制を組まれることになっておる。お前たちが心配するには及ばん」
「ですが、オシロイシメジもかなり本気で奪いにかかってくると思います」
 妙に明確に三郎が言い切る。「それでも大丈夫なのでしょうか」
「お前たちが心配することではないと言ったはずだ」
「でも、相手の戦力を半減できれば、防備はかなり万全になりますよね」
「何が言いたい」
「簡単なことですよ」
 挑発的に三郎がにやりとする。「いま、オシロイシメジは二重、三重に愚策をおかしているのですよ」
「それがどうした」
「そもそもオシロイシメジは複数の城と同時に戦を構えるという愚をおかしています。さらに火縄の裏取引を行っているうえに学園の硝石を奪おうとしています。オシロイシメジのもつ兵力から考えれば、いまは最大限に分散してしまっているということになりますよね」
「相手は城だ。そのくらいのリスクは当然分かっているはずだし、防御策を取っているはずだ」
「でも、絶対的な不足は、拭えないはずです」
「不足を補うためなら、領民を徴発したり傭兵を雇ったりいくらでもやりようはある」
「それは、質の面で致命的な問題を抱えることになると思うのですが」
 勝ち誇ったように三郎が言う。「つまりそこにつけ入るスキがあると思いますが、先生はどうお考えになりますか」
「ったくお前は」
 頭をがしがし掻きながら鉄丸はぼやく。「ああ言えばこう言う」
「なので先生にご協力いただきたいことがあります」
 勝手に三郎が話を進める。ふっと鼻息を吐いた鉄丸が腕組みして続きを促す。
「先生方に、火縄の調達を止めていただきたいのです」
 当然のことのようにしれっと言う三郎に、傍らにいた勘右衛門が青ざめる。
 -おい三郎! お前、先生に対してそんな危険任務を押し付ける気かよ! 俺まで巻き込まれて怒られるのは御免だからな…!
 ちらと伺った鉄丸の顔は、果たして青筋がいくつも浮いて頬が引きつっている。思わず勘右衛門は首を縮める。
「よかろう」
 低く放たれた声があまりに意外すぎて勘右衛門は聞き違えたかと思った。
 -先生、それホンキですか!?
「ありがとうございます」
 もっともらしく三郎が頭を下げて見せるので、勘右衛門も慌てて倣う。
「だが約束しろ。お前たちは硝石を奪われないよう守る。わしらは火縄の調達を妨害する。それ以上の手出しはするな。よいな」
 学園として正当防衛が主張できるのは硝石の話までなのだからな、と付け加えながら鉄丸は念を押す。
「はい! わかりましたっ!」
 調子よく返事する三郎を胡散臭そうにちらと見やった鉄丸は腕を組んだまま続ける。
「ならいい。作戦会議は明日だ。今日はもう下がるのだ」



「…ということになりましたが、よろしいでしょうな」
 三郎と勘右衛門が去ったあとで鉄丸がぼそりと言う。
「まあ、そのくらいは想定内ですな」
 天井板が外れると、伝蔵と半助が降り立った。
「たしかに、火縄のことまで五年生が手掛けるのは危険すぎます」
 半助が眉をひそめながら言う。
「ですが、オーマガトキまで敵に回すことになってしまいますが、大丈夫なのですか…うっかりするとオーマガトキと表向き同盟を組んでいるタソガレドキまで便乗してきかねませんぞ」
 鉄丸の心配は、学園の敵がこれ以上増えることにあった。
「まあ、木下先生のご懸念もごもっともですが」
 安心させるように穏やかに伝蔵が語りかける。「これは学園にとっても悪くない話ですからな」
「それは分かっておるが…」
 なお気がかりそうに鉄丸が呟く。 



「三郎。お前にはホント驚かされることばっかだよ」
 廊下を歩きながら勘右衛門が呆れたように言う。
「そう? どこが?」
 澄ました顔で三郎が訊く。
「だってよ。外出禁止の話から、オシロイシメジの火縄の調達を先生に妨害させるところまで持ってくなんて、策士すぎだろ」
「そんなことないさ。先生にだってそのくらいは協力してもらわないとね」
 いかにも大したことのないように言うが、その口調には得意げなものが混じっている。「それに、先生たちだってオシロイシメジが火縄をためこむなんてほっとけないはずだし」
「いずれ学園に銃口が向きかねないってか?」
「そういうこと」
 さらりと言った三郎だったが、ふいに眉を寄せて続ける。「でも、それで庄左ヱ門が満足してくれるかは別だけどね」
「お前が、の間違いだろ」
 三郎がもっともらしいことを言うときは必ず裏があることを知っている勘右衛門が突っ込む。
「バレたか…でも」
 小さく舌を出した三郎の声がふいに湿る。「庄左ヱ門のことも私は本気で心配している。庄左ヱ門のことだから、きっと二度と戦が起きないようにしてほしいと望んでいると思うんだ。とっても真面目だからね」
「そりゃ分かってるけどさ」
 丸い眼でまっすぐ自分たちを見上げる生真面目な小さい少年の姿を思い浮かべながら勘右衛門が言う。「俺たちにできることは限度があるだろ? そりゃ俺だって庄左ヱ門の思いを叶えてやりたいけどさ」
「そうなんだ…」
 俯いた三郎が呟く。「できれば私は、少しでも庄左ヱ門の思いを汲んでやりたいんだ」
「ま、とりあえずさ」
 せっかく話がうまくいきかけたのだから、と勘右衛門は明るく声を上げる。「今は俺たちにできることをやろうぜ! 兵助たちも引きずり込んでさっそく作戦会議だ!」



「庄左ヱ門、それは本当か?」
 思わず半助が声を上げる。
「はい…まちがいありません」
 端座した庄左ヱ門がまっすぐ半助を見上げながら答える。
 オシロイシメジの火縄調達を妨害することになった半助たちは、まずは教師長屋の自室に庄左ヱ門を呼んだ。火縄取引の様子を目撃したのは庄左ヱ門だけだった。だが、庄左ヱ門の口から飛び出した証言は、オシロイシメジが火縄を受け取ったのではなく、オシロイシメジが引き渡していたという事実だった。
 -オシロイシメジが鉄砲隊をリストラしているオーマガトキから火縄を入手しているものとばかり思っていたが、そうでないとすればどういうことだ…?
「なにか、作戦をかえないといけなくなったということですか?」
 見上げる視線に力がこもる。やれやれ、と伝蔵がため息をついた。
 -さすがは庄左ヱ門だ。上級生でもここまでの洞察力を持った者がいるかどうか…。
 心の中で呟いてから、おもむろに口を開く。「庄左ヱ門。ほかならぬお前だから言っておこうと思う」
「はい」 
 伝蔵に向き直った庄左ヱ門が力強く返事する。
「我々は、ずっとオシロイシメジが秘密に火縄を調達していて、それを庄左ヱ門に見られたことが今回の事件の原因だと思っていた。オシロイシメジはいろいろな城と戦をしているし、現にある城から火縄を買い入れているという話もあったからな。だが、いまのお前の話では、オシロイシメジが別の相手に火縄を売り払っているということになる。とすれば、我々はまずオシロイシメジが何の目的で火縄を売り払っているのかを探らねばならんということだ」
「それなら…」
 なにか気付いたように庄左ヱ門が口を開く。
「どうした?」
「ぼく、思いだしたんですけど…オシロイシメジ忍者につかまったあと、ぼくはしばられて火縄をつんだ荷車にのせられたんです。その上からむしろをかけられたんです」
「ふむ」
「だからすぐそばで火縄を見たんですけど、学園で使ってるのとちょっとちがうというか…火縄をつかわない仕組みになってたんです」
 違和感を抱いた銃の機構をうまく説明できずに庄左ヱ門は口ごもる。「もしかして、前に虎若に聞いたことがある火縄をつかわない銃なんじゃないかなって思ったんです」
「ふむ…それは歯輪銃(ホイールロック式銃)かもしれんな」
 髭をつまみながら伝蔵が呟く。
「ですが、ものすごく高価なものだと聞いたことがあります」
 腕を組んでいた半助が言う。「それに、命中精度に難があると」
「それが、オシロイシメジが銃を手放そうとし、かつ調達しようとした理由だろうな」
 伝蔵が声を低める。「使い物にならなかった歯輪銃を手放し、使い慣れた火縄を手に入れようとする。それなら話のつじつまが合う…でかしたぞ、庄左ヱ門」
 言いながら庄左ヱ門の頭をなでる。「お前の観察のおかげで、オシロイシメジの動きの本質が読めた」
「はい!」
 頭をなでられていた庄左ヱ門がくすぐったそうに見上げる。




← Return to さらわれた庄左ヱ門     

   Settlement 1 

Continue to Settlement  3 → 


Page Top ↑